コラム

技術職の人間が、勉強して資格を取得する意味はあるのか

受験料を払い、休日に参考書を開いて、合格の通知を受け取った。社内の資格一覧に、名前が一行増える。

ただ、上司が割り振る案件も、毎月の給与も、そのあと特に変わらない。取った意味がどこにあったのか、と考える場面です。

資格が働いていないわけではありません。資格を見る主体は三者いて、それぞれが別の事情で、持っている資格名を見ています。

目次

資格を見る三つの主体

同じ保有資格という情報が、三つの主体によって別々の目的で使われています。

【1】「会社」が決める手当と昇格

一つ目は、本人が所属する会社です。会社は、特定の資格を手当の支給要件や昇格の条件として制度に置き、該当する社員の処遇に反映させます。

【2】「発注元」が決める案件の要件

二つ目は、仕事を発注する側です。発注元は、自社の基準にもとづいて、案件に入る要員が持つべき資格を指定します。

【3】「採用」する側が決める募集の要件

三つ目は、人を採用する部門です。採用する側は、任せる業務から逆算して、募集要項に資格条件として含めるかどうかを決めます。

そのため、一つのステークホルダーに対して効いた資格が、他の二つでも効くとは限りません。

会社が資格手当を置く理由

一つ目の主体である会社が、なぜ資格の取得を推奨するのかを見ます。

【1】賃金規程に並ぶ資格名

会社が対象にしている資格は、賃金規程の別表や社内の資格一覧に並んでいます。会社はそこに、資格名と手当の額、対応する等級を書いています。

本人がこの制度で処遇を動かせるかどうかは、その一覧に資格名があるかどうかで決まります。

【2】会社が人数を確保する事情

そして、会社が手当を払ってまで資格の取得を促すのは、その資格を持つ社員の人数を、会社自身が外から求められているためです。

求めているのは、取引先の調達基準であったり、業務に必要な許認可の条件であったりします。会社は、社員に払う手当をその確保の費用として扱っています。

【3】会社ごとに変わる対象

同じ職種でも、会社が扱う案件の種類が違えば、条件となる資格も変わります。本人が転職した場合、移った先の会社が同じ資格を好意にしているとは限りません。

会社の制度は、その会社の中でだけ通用します。 社外でも効くかどうかは、残る二者が要件にしているかどうかで決まります。

発注元が資格を指定する理由

二つ目の主体である発注元が、どの場面で資格の保有有無を見ているかを見ます。

【1】提案時に出す要員情報

客先常駐や受託の現場では、所属する会社が提案の段階で要員の情報を提出します。担当できる工程、扱える技術とともに、保有する資格が並びます。

発注元はこの情報を見て、その要員をプロジェクトに入れてよいかを判断します。ここでの資格は、本人の力量の評価ではなく、席に入る条件として働きます。

【2】発注元の調達基準と入札要件

発注元が資格を指定するのは、自社の調達基準や、入札・監査の条件で、有資格者の人数が決まっている場合です。

人数を満たせなければ、発注元はその案件を出せないこともあります。 個人の力量とは別の事情で、資格の有無が先に確認されることになります。

【3】本人が担当できる案件の幅

結果として、資格は本人が担当できる案件の範囲を変えます。一方で、会社が社内の制度で処遇を動かすとは限りません。

資格を取ったのに給与が変わらない状態は、ただ単純に、会社の制度がそうなっていないだけです。

採用側が要件に置く理由

三つ目の主体である採用する側が、資格をどう扱っているかを見ます。

【1】採用側が必須要件に置く場合

採用する側が必須要件に資格名を書くのは、そのポジションに有資格者を置くなんらかの必要性があるときか、スキル面の足切りです。発注や入札の条件、許認可の要件が背景にあるかもしれません。

この場合、採用する側は資格の有無で応募者を先に分けます。経歴の中身を読むのはそのあとです。

【2】採用側が歓迎要件に置く場合

歓迎要件に置かれている資格は、採用する側にとって比較の材料の一つです。採用する側は、本人が担当した業務の記述と資格の範囲が重なっているかを見ます。

重なりがない場合、採用する側はその資格を関心の記録として受け取ります。応募の可否には影響しません。

【3】記載のない募集

募集要項に資格の記載がない場合、採用する側はその席で資格を要件にしていません。本人が何を持っていても、選考の判断には組み込まれません。

この場合に採用する側が見ているのは、本人が担当した工程と範囲のほうです。

資格が動かさないもの

より細かく見ていくと、資格の保有有無が直接的に影響しないことは多々あります。

【1】上司が決める担当の割り当て

日々の担当を決めるのは、本人の上司と、会社の要員計画です。ここに資格は直接は関係しません。

資格が効くのは、発注元が要員を選ぶ場面や、会社が制度で処遇を決める場面です。上司が誰に何を任せるかは、別の経路で決まります。

【2】どこにも求められない資格

会社の制度の一覧になく、発注元の指定にもなく、関心のある募集の要件にも出てこない資格があります。この場合、その資格に着目する主体がいないことになります。

本人が取らないという判断をしても、失うものはありません。資格は、どの主体が要件にしているかを確かめてから選ぶ対象になります。

【3】三つの文書で確かめられる

確かめる先は三つの文書です。会社の賃金規程の別表、いま参加している案件の要件、関心のある職種の募集要項。

どこに資格名があるかで、その資格をどの主体が要件にしているのかが決まります。

まとめ

・資格を見る主体は、本人の会社・仕事を発注する側・他社で採用する側の三者。

・会社が資格手当を置くのは、有資格者の人数を会社自身が外から求められているためであるケースがある。対象資格は会社ごとに変わる

・発注元が資格を指定するのは、調達基準や入札の条件で有資格者の人数が決まっているため。本人が担当できる案件の幅が変わる

・採用する側が必須要件に置くのは席に有資格者が要る事情があるとき、歓迎要件に置くのは比較の材料にするとき。記載がない募集ではなんらの判断にも入らない

・上司が決める担当の割り当てに資格は関係しない。三者のどこにも要件がない資格は、取らないという判断をしても失うものがない

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