
求人サイトの職種欄を開く。事務の下に、一般事務、営業事務、経理事務、人事事務と枝が並んでいる。三年続けてきたのに、自分がどれに当てはまるのかを選べない。
社内では「事務の人」で通ってきました。ただ、応募先はそこを一つの職種として見ていません。職務範囲の違う複数の職種として、別々に募集をかけています。
この記事では、その分かれ方を整理します。自分の経験がどの職種の範囲に入るのかが決まると、書類に書く内容も、担当者に伝える内容も変わります。
社内での呼び方は、役割が伝わればそれで足ります。誰が何をしているかは同じ部署の人が知っているため、名称を細かく分ける必要がありません。
そのため、評価シートの職種欄も名刺の肩書きも「事務」のままになります。日々の業務が請求書の発行なのか受発注の処理なのかは、呼び方には現れません。
一方、採用する側は職種ごとに募集をかけます。空いた席が経理の締め業務であれば、募集するのは経理です。一般事務として募集することはありません。
求人票の必須要件は、その席で任せる業務から逆算して書かれています。同じ事務でも、要件の文面が職種ごとに違うのはこのためです。
さらに、職種名が一致していても中身が同じとは限りません。「営業事務」は、受発注の処理が中心の会社もあり、見積の作成から顧客対応まで含む会社もあります。
募集要項に列挙された業務のうち、いま自分がやっているものがいくつあるかを数えると、そのポジションまでの距離が見えてきます。
バックオフィスの職種は、おおまかに五つの範囲に分かれます。会社の規模によって兼務の仕方は変わりますが、募集の単位はこの区切りに沿うことが多くなります。
一般事務・庶務は、部署の運営に必要な業務を横に広く持ちます。資料作成、電話や来客の対応、備品や郵送の管理などが含まれます。
営業事務は、販売の流れに沿った業務を持ちます。受発注の処理、見積と請求、納期の調整、顧客からの問い合わせへの回答が中心になります。
この二つは近く見えますが、営業事務には社外との直接のやり取りと、売上に直結する処理が入ります。採用側が確認する点も変わります。
経理は、仕訳、支払、月次と年次の決算、税務関連の資料作成を扱います。人事・労務は、給与計算、社会保険の手続き、勤怠管理、採用に関する事務を扱います。
どちらも、締めや法定の期限に業務が紐づきます。期限が動かせないため、担当できる範囲が採用要件として具体的に書かれます。
総務は、契約書や文書の管理、施設や設備、社内規程、会議体の運営などを扱います。会社によって範囲の広さが最も変わる職種です。
一般事務との境目もはっきりしません。募集要項で「総務」とある場合は、列挙されている業務を先に確認することになります。
境界の動き方は、会社の規模に沿います。人数が増えると、総務から人事や法務の領域が切り出されていきます。
規模の小さい会社で総務を担当していた場合、範囲は広い一方で、一つの領域の深さは求められていません。この差が不利になるわけではありませんが、応募先の規模によって読まれ方が変わります。
職種 | 主な職務範囲 | 採用側が確認する点 | 積み上がる方向 |
|---|---|---|---|
一般事務・庶務 | 部署の資料作成、電話・来客、備品、郵送 | 業務範囲の広さ、調整の経験 | 部署運営の全般 |
営業事務 | 受発注、見積・請求、納期調整、顧客対応 | 処理の量、使用システム、社外対応の範囲 | 販売プロセスの実務 |
経理 | 仕訳、支払、月次・年次決算、税務資料 | 決算のどこまでを担当したか、会計ソフト | 会計の専門 |
人事・労務 | 給与計算、社会保険、勤怠管理、採用事務 | 給与計算の対象人数、制度運用の経験 | 労務の専門 |
総務 | 契約・文書管理、施設、規程、会議体の運営 | 担当した領域の範囲、社内調整 | 管理部門の運営 |
なぜ、同じバックオフィスなのに募集が分かれるのか。三つの条件が効いています。
経理の決算と人事の社会保険手続きは、期限が外側から決まっています。遅れた場合の影響が社内に収まらないため、任せる相手を職種の経験で絞ります。
一般事務の業務は、優先順位を社内で調整できるものが多くなります。そのため、経験の指定より、範囲の広さや対応の速さが評価につながりやすい傾向があります。
覚える内容が体系として決まっている業務は、引き継ぎの手順も決まっています。逆に、社内の事情と紐づいた業務は、手順書だけでは渡りません。
引き継ぎに時間がかかる業務を持つ席は、途中で止まると代わりがいません。だから募集の段階で、同じ業務の経験者がより強く求められます。
決算を締められるか、給与計算を何人分できるか。こうした確認は同じ職種の中でしか成立しません。職種を横断した比較の材料がないため、募集も職種で分かれます。
この点は、範囲を広く持ってきた人には不利に働く場面があります。複数の領域を回してきた経験は、職種の中の深さとしては測られにくいためです。
しかし、測られにくいことと、価値がないことは別です。範囲の広さが要件になる募集は別にあり、そこでは職種の深さより、初めての業務を自分で回せるどうかというスキルが確認されます。
自分の経験がどの職種に入るのかは、肩書きではなく業務から決まります。手順は三つです。
まず、直近の一週間にやったことを、そのままの言葉で書き出します。整理せずに、思い出した順で構いません。
書き出すと、業務の重心が見えます。件数が多いものと、時間を取られているものが同じではないことに気づく場合もあります。
粒度は、一つの動作が分かる程度で構いません。「経理補助」ではなく「支払データの入力」「振込依頼書の作成」と分けておくと、次の振り分けができます。
次に、書き出した業務を前章の五つの範囲に振り分けます。複数にまたがる業務は、両方に置いて構いません。
振り分けた結果、最も数が多い範囲が、いま応募できる職種に近い位置です。数が分散している場合は、一般事務・庶務としての範囲の広さが持ち味になります。
最後に、書類での表現を置き換えます。社内の呼び方をそのまま書くと、範囲が伝わりません。
× 一般事務として3年、幅広い業務を担当してきました。
○ 営業部の受発注処理を担当。専用システムへの入力が月およそ200件、納期変更の連絡は週に数件を顧客と直接やり取りしていました。
× Excelが得意です。
○ 毎月の集計表を関数で自動化し、作業時間を従来の半分程度にしました。手順書を作成し、他の担当者2名でも同じ処理ができる状態にしています。
ここまでは職種を特定する話でしたが、範囲を分けないまま続けることが不利になるとは限りません。
少人数の会社や立ち上げ期の部署では、業務が職種の単位に分かれていません。一人が横に広く持つ前提で組織が組まれているため、範囲の広さがそのまま要件になります。
こうした募集では、専門領域の深さより、初めての業務を自分で調べて回せるかが確認されます。分散していた経験が、ここでは一続きの経験として読まれます。
確認しておく点もあります。範囲が広い前提の組織では、業務量の調整も自分で行う形になります。面談では、いま何名でどの範囲を回しているかを聞いておくと、入社後の負荷が見えます。
経理や人事に移ると、担当は深くなりますが範囲は固定されます。締めの時期に負荷が集中する働き方にもなります。
横に広く動いてきた人にとって、これが窮屈に感じられる場合があります。専門性を持つことと、仕事の進め方が合うことは別の話です。
決めかねる場合は、直近一年を振り返って「初めてやった業務」があるかを見てみてください。
あるなら、範囲はまだ広がっています。無いのであれば、業務の固定が進んでいる可能性があります。そのときに初めて、どの職種の方向に寄せるかを決める段階になります。
・バックオフィスは一つの職種ではなく、一般事務・庶務/営業事務/経理/人事・労務/総務に分かれて募集される
・分かれる理由は、業務が期限や法令に紐づくか、引き継ぎに時間がかかるか、評価の材料が職種内でしか成立しないかの三点
・自分の位置は肩書きではなく業務で決まる。一週間の業務を書き出し、五つの範囲に振り分けて、最も数が多い範囲を見る
・書類では社内の呼び方を使わず、対象の範囲と量に置き換える。数が出ない業務は部署人数や取引先数で代えられる
・専門範囲を絞らないまま続ける選択も成立する。少人数の組織では範囲の広さが要件になるため、直近一年で初めてやった業務があるかを材料にする