
ミスなく処理している。周囲から頼られている。それでも、昇給の幅は小さいまま。評価面談でも、特に指摘されることがない。
事務職として働いていると、こうした状態になることがあります。これは能力の問題ではなく、評価が行われる仕組みの側に理由があります。
この記事では、その構造を整理します。
先に結論を書きます。
事務職の評価が上がりにくい背景には、主に3つの構造があります。
1. 間接部門という位置づけ
2. 成果が数値化されにくいこと
3. 職種ごとに賃金レンジが設定されていること
この3つは、いずれも個人の努力とは別のところで働きます。
多くの企業では、部門を2つに分けて管理しています。
営業、開発、製造など、売上に直接つながる部門です。
事務、経理、人事、総務など、直接の売上を生まない部門です。
この区分自体は、仕事の価値を測るためのものではありません。会計上、売上に紐づけられるかどうかで分けているだけです。
ただし、予算配分の場面では意味を持ちます。売上が伸びれば直接部門の人件費は増やしやすい一方、間接部門の人件費は「削減の対象」として見られやすくなります。
ここに、事務職特有の難しさがあります。
業務量が増えても、それが売上の増加として説明しにくいため、人員や賃金の増加につながりにくい。一方で、業務が滞れば会社全体が止まります。
重要度と、予算上の扱いが一致しにくい構造です。
2つ目は、成果の見え方の問題です。
事務職の成果は、多くの場合「問題が起きないこと」として現れます。
・請求書の処理が期日どおりに完了している
・必要な資料が必要なときに揃っている
・問い合わせが滞留していない
これらは、うまくいっているときほど誰の目にも触れません。逆に、ミスが起きたときだけ可視化されます。
評価制度の多くは、目標に対する達成度で測る形をとっています。しかし事務職の場合、設定できる目標が「現状維持」に近くなりがちです。
・営業職|目標:売上◯円 → 達成率で測れる
・事務職|目標:正確な処理 → 達成が前提になる
結果として、「できて当たり前」という評価の枠から出にくくなります。
ここで押さえておきたいのは、これが評価者の怠慢とは限らないことです。測る仕組みがないものは、評価する側も評価しにくい。
構造上の問題です。
3つ目は、賃金の設定です。
企業によっては、職種ごとに支払える賃金の範囲をあらかじめ分けています。
├────────────┤ 営業・技術職
├──────────┤ 事務職
→ 年収
この場合、同じ等級であっても職種によって上限が異なります。
そして、事務職のレンジは相対的に低く設定されているケースがあります。理由として挙げられるのは、次のようなものです。
・採用市場での相場が異なる
・代替可能性が高いと見なされている
・成果と賃金を紐づける根拠を作りにくい
ここで重要なのは、レンジの上限に近づくと、評価が高くても昇給幅が小さくなるという点です。
つまり、「評価されていないから上がらない」のではなく、「上げられる範囲を使い切っている」状態が起こり得ます。
ここまで構造の話を書きましたが、事務職がすべて同じ扱いというわけではありません。評価が上がりやすくなる場合もあります。
こちらも整理しておきます。
経理、人事労務、法務、貿易実務、英文事務など、特定の知識や資格が必要な領域では、採用市場での相場自体が変わります。代替が難しい分、レンジも異なる設定になります。
決められた処理をこなすだけでなく、以下のような経験は、成果として説明できます。
・手順を整理して標準化した
・システムやツールを導入した
・他部署との連携の流れを作った
「作業をした」ではなく「業務を設計した」という位置づけです。
中小規模の企業では、一人が経理・人事・総務を横断して担当することがあります。この場合、管理部門全体を見られる人材として評価されることがあります。
つまり、分かれ目は「定型業務の実行」にとどまっているか、「業務そのものへの関与」があるかです。
そして後者は、本人が自覚していないことが少なくありません。
最後に、事務職が自身の経験と実績を整理する手順をお伝えします。
日次、月次、年次で分けて書き出します。自分にとっては当たり前でも、他社では別の人が担当している業務があります。
次の観点で振り返ってください。
・手順を変えたこと
・作った資料やフォーマット
・引き継いだ、または教えた経験
・トラブルへの対応
例)
× 請求書処理を担当
○ 月間約200件の請求処理を担当。チェック手順を一覧化し、他のメンバーでも対応できる状態にした
現在の業務のうち、特定の知識が必要な部分があるかを見ます。なければ、どの領域なら積み上げられそうかを考えます。
ここまで整理したうえで、その経験が市場でどう評価されるのかは、自分では判断しきれません。評価するのは常に相手側だからです。
転職エージェントに登録することで、転職を決める前でも、現在地を確認する目的で相談することができるので、ぜひ活用してみてください。
・評価が上がりにくい背景には3つの構造がある
・間接部門は、業務量の増加が売上として説明されにくい
・事務職の成果は「問題が起きないこと」として現れ、可視化されにくい
・職種別に賃金レンジが設定されている場合、上限が異なる
・専門領域や業務設計の経験があれば、評価は変わる
・「作業をした」ではなく「業務を設計した」部分を書き出す