コラム

営業経験は転職市場でどう評価されるのか

営業経験は、転職市場で評価されやすい経験のひとつです。

ただし、「営業を◯年やりました」という情報だけでは、採用側は何も判断できません。営業という言葉が指す仕事の範囲が、あまりにも広いからです。

同じ年数でも、扱っていた商材や担当していた役割によって、評価される場所はまったく変わります。

この記事では、その違いがどこから生まれるのかを整理します。

目次

営業は一つではない

まず、営業という職種がどれだけ幅を持っているかを確認します。たとえば、次の2人はどちらも「法人営業3年」です。

【Aさん】

従業員300名規模の製造業に対して、基幹システムの導入提案を担当。商談期間は平均6ヶ月。1件あたりの契約金額は数百万円規模。顧客の課題をヒアリングし、社内のエンジニアと連携して提案書を作成。

【Bさん】

個人商店を中心に、通信サービスの新規契約を担当。1日あたり20件の訪問。その場で契約を判断してもらう形式。月間の契約件数で評価される。

どちらも営業です。しかし、身についている能力は別のものです。

Aさんは長期の関係構築と社内調整。Bさんは短時間での訴求と行動量の管理。

採用側は、この違いを見ています。つまり、評価されているのは「営業経験の年数」ではなく、その中身なのです。

5つの軸で分解する

自分の経験を整理するとき、次の5つの軸で分けると見えやすくなります。

【1】誰に売っていたか

・法人か、個人か

・法人の場合、企業規模と業界

・意思決定者は誰だったか(経営層/現場責任者/担当者)

【2】何を売っていたか

・有形商材か、無形商材か

・自社製品か、他社製品の取り扱いか

・単価の水準

【3】どういう役割だったか

・新規開拓か、既存顧客の深耕か

・その比率はどれくらいか

・インバウンド(問い合わせ対応)か、アウトバウンドか

【4】商談のサイクル

 ・1件あたりの検討期間

 ・接触回数

 ・関わる部署の数

【5】どこまで担当していたか

 ・リスト作成から担当していたか

 ・提案書は自分で作っていたか

 ・契約後のフォローも担当していたか

この5つを書き出すと、自分の経験がどういう性質のものかが見えてきます。そしてこれは、そのまま職務経歴書の材料になります。

何を見られているか

採用側が確認しているのは、実績の大きさそのものではありません。その実績が、自社でも再現できるかどうかです。これを再現性と呼びます。再現性が伝わるかどうかで、評価は大きく変わります。

たとえば、同じ「目標達成率120%」でも、

・市場が伸びていた時期だったのか

・既存顧客からの継続契約が中心だったのか

・自分で工夫したことがあったのか

によって、意味が変わります。だから重要なのは、結果ではなく過程です。

・どういう課題があったのか

・それに対して何をしたのか

・その結果、何がどう変わったのか

この3つが説明できると、異なる商材・異なる顧客層であっても、同じ動き方ができると判断されやすくなります。

逆に、結果の数字だけを並べると、「環境が良かっただけかもしれない」と受け取られる余地が残ります。

実績数字がない場合

「数字で語れる実績がない」という声は多くあります。

ただ、営業職で使える指標は売上と達成率だけではありません。次のようなものも実績になります。

・チーム内での順位

・前年比、前任者比

・担当顧客数、担当エリアの規模

・継続率、解約率

・商談化率、受注率

・新規顧客の獲得件数

また、数値化が難しい場合でも、プロセスの改善は書くことができます。

例)

× 顧客対応を担当

○ 問い合わせ対応の初動を当日中に統一。対応履歴を共有シートにまとめ、担当者不在時も引き継げる形にした

規模の大小は問われません。自分が何を判断して、何を変えたのか。それが説明できれば、材料になります。

なお、守秘義務にあたる具体的な数値や顧客名は記載できない場合があります。その際は「従業員300名規模の製造業」のように、特定されない形に置き換えてください。

評価されにくい場合

一方で、営業経験が評価につながりにくくなる場合もあります。先に書いておきます。

【担当範囲が限定されていた場合】

リストを渡され、決められたトークで訪問し、契約は別の担当者が処理する。こうした分業体制では、自分が何を判断したのかを示しにくくなります。この場合は、限られた裁量の中で工夫した点を探すことになります。

【商材の固有性が高い場合】

特定の業界でしか通用しない商品知識は、他業界では評価対象になりにくくなります。ただし、商品知識ではなく「顧客の課題をどう引き出したか」の部分は移せます。

【説明が用意できていない場合】

実際には評価に値する経験があっても、言語化されていなければ伝わりません。これは経験の問題ではなく、準備の問題です。

【営業以外への転換を目指す場合】

カスタマーサクセスや企画職など、営業経験が活きる職種もあります。一方で、専門資格や実務経験が要件になる職種では、営業経験の長さは有利に働きません。この場合は、必要な経験を積む順序から考える必要があります。

書き出しておくこと

最後に、営業職種の人間が、転職活動前に実績を整理する手順をまとめます。

【手順1】5つの軸で経験を分解する

誰に/何を/どういう役割で/どのサイクルで/どこまで

【手順2】従事した案件を3つ書き出す

うまくいった案件だけでなく、苦戦した案件も含めて構いません。それぞれについて、 以下の三点を書きます。

・どういう状況だったか

・何をしたか

・結果どうなったか

【手順3】共通している動き方を探す

3つほど担当してきた案件を並べると、自分がどういう場面で力を発揮しているかが見えてきます。それが、他社でも再現できる部分です。

そして、ここで書き出したものが、職務経歴書と面接の両方で使う材料になります。自分の経験がどの業界で評価されるかは、自分では判断しきれません。

整理したうえで、市場を見ている人に評価を聞くのが確実です。

まとめ

・営業経験は年数ではなく、中身で評価される

・5つの軸(対象・商材・役割・サイクル・担当範囲)で分解する

・見られているのは実績の大きさではなく、再現性

・数字がなくても、順位・継続率・プロセス改善は材料になる

・分業体制や商材の固有性が高い場合は、評価軸が変わる

・案件を3つ書き出すと、共通する動き方が見えてくる

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